Translated by momo

* He’s the real Maguire *
Torontosun.com, January 1, 2000



彼の友人、レオナルド・ディカプリオの名前を出してみよう、するとトビー・マグワイアは少し口ごもる。マグワイアは照れているのではない、有名になると自分と友人に何が起こるか、なんてことをペラペラしゃべりたくないだけなのだ。

  ”ぼくは、ううんと、あの、あせって有名になろうなんて思ってないよ”マンハッタンの中心にあるホテルで、はにかんだように口ごもりながらマグワイアは語る。
”僕はまだ24だし。有名になることなんてどうだっていいんだ。”

 彼は、その焦らないペースでやって行くことになったかもしれないが、しかし次々と話題作に出演したことで、有望な若手映画俳優の選ばれた一人、になったのだった。

 新しい世紀の幕開けを迎えた今日、マグワアイアは、このエンターテイメント業界の多くの候補者の中でも、世界的名声に手が届く抜きん出た存在だ。今、彼の事を知らないと言うのなら、すぐに知るところとなるだろう。

 近年の出演作『アイス・ストーム』や『プレザントヴィル』の成功から、『楽園をください』(10月に公開された)に主演を果たし、これも主役を務めるジョン・ア−ヴィングの小説の映画版『サイダー・ハウス・ルール』は現在公開中である。

 『サイダー・ハウス』でマグワアイアはホーマーを演じている。自分探しの旅で成長する孤児の役だ。他にマイケル・ケイン、デルロイ・リンド、シャーリーズ・セロン、ポール・ラッドが共演している。

 1930年代のある時代を演じる、マグワアイア独特のやり方は、非常に繊細で微妙なものなので、映画の中ではそれとわからないほどだ。

 ”僕はラッセに提案してみたんだけど”『サイダー・ハウス・ルール』の監督、ラッセ・ハルストレムのことだ、
”演じるのにできるだけ抑えたやり方で行きたい、ってね。それで彼はそうさせてくれたんだ。”

 誰に聞いても、その控え目なやり方はうまく行ったのだった。この映画でマグワイアが演じるホーマーの父親代わりで、医師の役を演じるベテラン俳優マイケル・ケインも、マグワイアのファンの一人である。

 ”トビーはとても優れた俳優だからね、演技してるのがわからないぐらいだよ”ケインはこう述べている。彼は演技について何冊かの著作もものにし、ただがむしゃらに演じるだけのやり方には手厳しい考えを持っている。
”彼の演技の工夫は、他人には全くわからないものだね。”

 ケインの評価は、このロサンジェルス生まれの俳優に送られた、大方の讃辞と同じようなものだ。ロバート・デ・ニ−ロとディカプリオが主演した1993年の作品、『ボーイズ・ライフ』での彼のデビューは、ほんの小さな役だった。ちょっとした失敗に続き、彼はチャンスを失っていた。そう、19才で、精神的な不調に襲われていたのだ。

 1997年の『アイス・ストーム』で、どこか周りから浮いている10代の若者という役柄を演じたことで彼は、内面でも仕事の面でも自分を取り戻し、<控え目で微妙な陰影を持つ、来るべき世代の>注目すべき役者、という顔を持つことになった。

 ”だけど僕は、どんな役柄でもやってみたいと思ってるよ。”マグワイアは言う、”自分っていうものを試してみたいんだ。”

 ”そうだね、確かに、直感でやっていたんだよね、抑えた演技っていうのは。僕ぐらいの年には、直感を働かせてやった方がいい、ってこともあると思うんだ。そうすることでうまくハマることもあるだろうし、それでたぶん、僕が出てる作品を見たいっていう人もいるんじゃないかな。”

 彼は、そう答えて終わらせようとしたが、何か思い当たることが浮かんだように、微笑んだ。

 ”おかしいよね。『サイダー・ハウス』のスタジオの偉い人たちが、ずっとラッセに聞いてたんだ、「彼はちゃんと演技してるのかね?」ってさ、とりあえずの編集を見てね。でも、見る人にそう思わせることこそが、ぼくがやりたいことだったんだ。”

 マグワイアは、実際のところ、個人的にも仕事上のことにも、いろいろな場面で、ものごとを和やかに進めたいと思っている。

 ”本当だよ”彼は言う、”レオみたいに注目を浴びたりしたくないんだ、ほんとに。1年に何日か有名になったら、あとの残りは無名の存在でいたいんだ。”

 ふざけて降参、というように頭上に両手を突き出すと、彼はおかしそうに笑う。

 ”わかってるんだけどね、そんなふうにはいかない、ってさ。”

  実際マグワイアは、ショウ・ビジネスというものは自分がそうありたいと望むよりも少し、高度な姿勢を要求されがちなものだということを、いやというほど味わっているところだ。

 つい先日のように、手に追えないようなことだって起こる。彼はエージェントに、舞台の仕事をしてみたいんだけど、と言ってみたのだった、もし、タイミングが合えば、と。彼は返って来た答えに驚いた。

 ”「ああ、それはいいね」僕のエージェントはすっかり舞い上がって言ったものだよ、「じゃあ、君にブロードウェイの仕事を探そう」だってさ”

 大げさな受け答えを思い出して、マグワイアは頭を振る。

 ”僕は答えたよ、「いや、いや、そうじゃなくって、オクラホマのタルサなんかどうかなって思ったんだ、−−ほんの数週間とかさ」ってね。”

By Bob Thompson