* Tobey Maguire * Detour November 1996 南カリフォルニアの地図にピンを刺す。 そうすれば、ひょっとすると、トビー・マグワイアがかつてホームと呼んだ街にたどり着くかもしれない。 テイクアウトした”ベジタリアン向けタイ風ヤキソバ”の入った容器からトウフの大きな塊を突き刺しつつ、彼は頭に浮かんだ端から指折り数えていく。。 「僕が住んでいたのはサンタモニカ、ヴェニス、ハリウッド、バーバンク、北ハリウッド、スタジオシティ、シャーマンオークス、レセダ、パームスプリングス・・・」 こうしている間にも、彼はまた引っ越しをしようとしている。 「今、凄くステキなところに引っ越ししている最中で、僕の頭はそのことで一杯なんだ。だって、そこには最高のキッチンがあるし。」 もぐもぐと口を動かす合間に彼は言う。 「料理をするのが大好きなんだ。」 多少やせ気味かもしれないが、しかし21歳のマグワイアは食事を楽しんでいる。 6年生の時、選択科目で家庭科を取りたいとさえ思っていた彼に、女優になりたいと熱望していた母親は、100ドルを与えて、代わりに演劇の授業を受けさせた。 母親の買収は功を奏した。 13歳で最初の仕事を得、17歳で『Great Scott』シリーズの主演、そして『ボーイズ・ライフ』では、結局その役は友人のレオナルド・ディカプリオに決定したのだが、彼は最終選考まで残った。 二人の俳優は、役を貰えた方はもう一方を売り込むことを約束し、ディカプリオはマグワイアが脇役を得る手助けをすることでその取り決めを守った。 昨年、マグワイアはオスカーにノミネートされた短編『Duke of Groove』で、ユマ・サーマンのキスをゲットしたのだが、それがきっかけでアン・リー監督の『アイス・ストーム』に主役として抜擢され、ケヴィン・クライン、シガニー・ウィーバーと競演。 さらに、ウディ・アレンの次の作品への出演も決定した。 挫折した両親のなだめ役に徹していた青年にとって、それは悪い話ではなかった。 いくつもの学校をたらい回しにされた後のことを、彼はこう語る。 「“半年以上友達もいないし、もうなんだかどうでもいいや”みたいな感じだったね。 それで、僕はあまり学校に行かなくなって、両親はものすごく頭にきてた。 “学校へ行く気はないよ。で、どうするつもり?”って、僕が言うと、母は“無断欠席生徒補導員に電話するわ”って。 だから“OK。電話しなよ。”って言ったんだ。」 その代わりとして、彼らは取引をした。 「母は、のんびりと気楽な学校へ通って俳優をやるか、普通の学校へ通うかを僕に選ばせた。それで、僕は演技ってやつを選んだわけ。それが始まり。」 彼はポレンタの容器を開けた。 「ああ、そうだ、」彼は言った。「パノラマ・シティにも住んでたことがあったよ。」 By Juan Morales |