* Cameo : Actor Tobey Maguire *
Premiere November 1997


現代のホールデン・コールフィールド(『ライ麦畑でつかまえて』の主人公)と称すべきこの若手俳優は、優れた才能を持つ監督達の注目を集めた。

最悪なにやにや笑い。それが、トビー・マグワイアの最初の印象だ。そして次の瞬間、彼は魅力的な笑顔を作ってみせる。
なかなかどうして、悪くない印象だ。
21歳のマグワイア(ジェリー・マグワイアとは無関係である)は、ウディ・アレン(『地球は女で回ってる』)、アン・リー(『アイス・ストーム』)両監督の作品に出演することで、彼の代表作の経歴作りを、今まさに始めたところだ。
しかし、それは彼のほんの一部分を垣間見たに過ぎない。
第二の印象は、マグワイアがアイス・ストームで演じる、すべての意味を理解しようともがく青年・ポール・フッドの中に見て取れる。彼は、感情が凍り付いてしまったコネチカットの二つの家族を、澄んだまなざしで見つめる。 
この映画の中で最も共鳴する瞬間は、ポールが恋い焦がれる女の子との、親密になるための企てが大失敗する時に訪れる。
「僕もドストエフスキーのファンだよ」と、彼は映画の中で、口ごもりながら言う。
「『地下室の手記』 が好きなら 『白痴』 も気に入ると思うよ」
彼女がなんの興味もなさそうに行ってしまうと、ポールはまるで着慣れた服のブランド名のように、まじめくさって本の題名を繰り返す。「『白痴』だよ」と。
口にカナリアをくわえた猫(のように自信に満ちた顔)と、いらないと拒絶された子供(のような不安げな頼りなさ)。マグワイアの魅力は、この二つの間をたやすくスイングできるところだ。
離婚した両親との幼児期は、少なくとも間接的に彼の演技への興味を高めるきっかけとなった。
「僕は周りにあわせるのが得意だったんだ」と、彼は言う。
「どこだろうと、あっという間に周りにとけ込むよう、自分自身に言い聞かせてたよ」 
ハリウッドでも‘あっという間’に、彼はFOXの 『Great Scott!』 の主役となった。(ご存じの通り、ベンステイラー・ショウの前の番組である)
彼のキャリアにとって重大な局面となった今、マグワイアは「不可能なことは何もない」という思いで、気持ちを昂ぶらせている。
「僕の中には、滑稽な陽気さや、無邪気さというものが存在するんだ」彼は呟く。「だけど、僕はトム・ハンクスとジョン・マルコビッチの流れを汲む役者になると思うよ。」


By Jeff Stockwell