* This Boy's Life *
US Magazine Intervews


『カラー・オブ・ハート』 に主演し、レオナルド・ディカプリオとも親しいトビー・マグワイアは、『アイス・ストーム』 出演以来、ビッグチャンスと共に走り続けてきた。
しかし、このハリウッドの新しいスターはまだ、土曜の夜のドミノが好きらしい。

つまりこれが、ハリウッドのど真ん中の土曜の夜のような、話題の若手俳優の生活なのだ。

サンセット大通りの午後11時。トビー・マグワイアは、2〜3枚のCDを手に、ヴァージンメガストアの外にあるテーブル席についている。ベック、ビースティーボーイズ、レッドツエッペリン、ザ・キュア。
彼は、白いTシャツの上にブルーのウインドブレーカー、スポーティーなクルーカット、そしてひと月分のもじゃもじゃのあごひげといった出で立ちだ。
片手には吸いかけの葉巻を持ち、もう一方の手には携帯電話。
1ブロック先のシャトー・マーモント・ホテルではパーティーが開かれるようだが、マグワイアはそんな気分じゃないらしい。
昨晩、彼はレオナルド・ディカプリオと12人の友人達とで、誰と一緒の滞在だったか箝口令が敷かれるほどに売れっ子になった、あるスターの家に泊まった。
しかしながら今夜のマグワイアは、より現実的な夜をすごすつもりらしい。
「ドミノが楽しみで、もう待ちきれないって感じなんだ」 いつものライバルである、24歳の俳優ジェイ・ファーガソン(TVシリーズ『Evening Shade』出演)の電話番号を押しながら彼は言う。

このようなドミノの夜は、新進の映画スターに期待するものではないかもしれない。
しかしまた、23歳のマグワイアは、若手スター候補として期待されたことは一度もない。

ベテランの子役であるマグワイアは、レッドカーペット上での宣伝という最近の仕事においても、ふんぞり返ることもなく、ティーン雑誌の強烈な香りを発散させた。
それどころか、ユマ・サーマンの相手役として、1995年のオスカーにノミネートされた短編 『The Duke of Groove』 で業界での熱狂を得た後、昨年のウディ・アレン監督 『地球は女で回ってる』 での好色な靴屋の店員や、悲壮感漂うドラマ 『アイス・ストーム』 での疎外感を感じている郊外のティーンエイジャーといった、作品全体を通して見られる繊細なアートハウス的演技で人々を魅了し、名声の裏口を悠然と通り抜けることとなった。
「大体30年に2〜3回、本物と呼べる役者が出てくるんだ。ダスティン・ホフマンなんかがそうだったね」
今月公開される皮肉なコメディ 『カラー・オブ・ハート』(テレビ漬けのティーンが、 “パパはなんでも知っている”スタイルの50年代のホームコメディに魔法のように吸い込まれる) の主役にマグワイアを抜擢した、作家で監督のゲイリー・ロスが言う。
「トビーは整った顔じゃない。映画俳優として‘二枚目’なのさ。トム・ハンクスがそうであるように、彼が演じる人物は本当に存在しているようで、そしてそのことが彼をもの凄く身近に感じさせるんだ」

マグワイアもまたハンクスのように、自分の経歴を管理することに関して、非常に知識が豊富だ。 若者向けのホラー映画に出演し、高校の連続殺人犯と戦って金を儲ける代わりに、彼は二つの映画出演の契約を交わした。
共演スキート・ウールリッチ、監督アン・リー、南北戦争の兵士を演じる 『楽園をください』 と、一人の孤児が自らの過去にとらわれる、ラッセ・ハルストレム監督の 『サイダーハウス・ルール』 だ。 どちらも来年劇場公開が予定されている。 
「トビーはとても計画的なの」
『カラー・オブ・ハート』 の共演者であるリース・ウイザスプーンが、感嘆したように言う。
「トビーは、若い時のニコラス・ケイジを思い出させるわ。彼は自分が創りたい映画がどんなものかちゃんと分かっているの。そして、やりたくないことは断固としてやらないわね」

彼が望まないものとは、親友のディカプリオを飲み込んだような、タイタニック・サイズの名声であるのは明白だろう。
「今までの経験から言えば、こういう人生もおもしろいよ。でも、実際には大変なんだけどね」
ルームメイトと一緒に、彼が‘快適だ’と評するL.Aの家に住むマグワイアは言う。
「そうだな、例えば、凄いチャンスを手にすると」 彼は話を続けた。
「プライベートジェットで飛び回るようなこともあるし、他人からひどい言葉でののしられることもある。それも一生に一度きりじゃなく、頻繁にそんなことが起こるんだ」
彼は一息つくと、あごひげを撫でた。
「思うんだけど名声って、その人がどんな人間であるかとか、どんなことにも傷つかずにいられるかっていうテストなんだよ。」

‘傷つかない’ことは、マグワイアの人生の中で、現在進行形のテーマである。
建設作業員兼コックの父ヴィンセントと、元秘書の母ウェンディは若くして結婚し、1年も経たないうちに離婚した。当時マグワイアは2歳にも満たなかった。
その時からマグワイアは嫌々ながら漂泊の民、彼が言うところの「サバイバリスト」となり、ロサンゼルスに始まりパームスプリングス、サンフェルナンドバレー、ワシントンと移動を繰り返した。
「狂ったように引っ越しばかりしてたよ」 と、彼は言う。
「僕が一緒に住んでいたのは、僕の母、母とその姉妹、祖母、母方の叔母、僕の父、父と父の母、父とその兄弟、母とそのボーイフレンド、父とその奥さん・・・」
その声は次第に消え入りそうになり、彼は息を吸い込んだ。
「僕はもの凄くいろんな状況の中で生きてきたんだ」

ますます不満は大きくなり、マグワイアはテレビやゲームのために、12歳で定期的に学校をサボり始めた。
「母との関係はうまくいってなかった」 と、彼は言う。
「僕は反抗的だったからね。ひどく冷静に母の目をじっと見つめて、‘学校には行かない’って言ったんだ。そうしたら彼女は‘無断欠席生徒補導員に電話させたいの?’って。だから受話器を取り上げて言ったんだよ。‘ナンバーは知ってる?僕がかけようか?’ってね」

彼らの問題は悪化し、マグワイアの母親はやりくりに苦心した。
「店に行って、母が食券で支払うのが恥ずかしくて、外で待ってることが時々あったよ」 マグワイアは思い返す。
「今考えれば、ばかみたいな事をしてた。僕は母を支えなきゃいけなかったのに」

マグワイアの子供の時の夢は、父親のようなコックになることだった。
しかし、女優になる夢を捨てた彼の母は、6学年の時、演劇の授業を受けるようにと100ドルで彼に話を持ちかけ、それはあっさりとまとまった。
「まったく!12歳にとって100ドルっていうのはさあ、ほら、大金だったから」 彼は言う。
「笑っちゃうよ。今じゃ何にも残ってないんだ」

マグワイアの他の授業への興味が弱まると同時に、彼の中の演劇の虫は、あっという間に確固たるものとなった。
彼は13歳になるまでに、アタリやマクドナルドのコマーシャルに出演し、最終的に 『Roseanne』 や 『Jake and Fatman』 といった番組へゲスト出演をすることとなる。
18歳で一般教育修了検定(高校中退者が受験する試験。合格すると、高校卒業に相当する証書が貰える)に合格、カリフォルニアのシルバーレイクのアパートに引っ越すと、若手俳優のためのオーディション巡りを始めた。

マグワイアはこうした下積み時代の間、ディカプリオを含む自分と同じような若手俳優達と切磋琢磨し、絶えず自己を見つめたものだった。
「僕たちは 『Parenthood』 って言うテレビ番組のオーディションに来ていたんだ」と、彼はその頃のことを思い出す。
「レオは、廊下でカラテのキックをしていた。僕のほうは、子供が仕事を貰うなんて無理!って感じだったな。でも彼はとてもリラックスしていた。役を貰えたのは、たぶんそれが良かったんだよ。結局、僕はその番組で2〜3言のセリフを貰って、そこから二人の付き合いが始まったんだ」

二人のつばぜり合いの一つに、1993年の作品である 『ボーイズ・ライフ』 の主役のオーディションがあった。
ディカプリオが役を獲得し、もちろん彼の人気も急上昇した。
‘友人1’程度の小さな役で終わったマグワイアのほうは、FOXのTVシリーズ 『Great Scott!』 に出演したが、その番組はすぐに終了してしまった。
それでもマグワイアは落ち込むことはなかった。
「欲しいものは、準備が整った時手に入るっていうのが、いつもの僕の考え方。だからあの時は、僕の準備がまだできてなかったってことだよ」

マグワイアは、ディカプリオとの付き合いについて、突っ込んだ話をすることに気乗りしないようだ。
「今のところ、ええと・・・レオのことだけど、誰もが彼について聞いてくるんだ」彼は用心深く言った。
「普通の22,3歳の奴らみたいに、僕らもディナーに行ったり、踊りに行ったりするよ。まあ、普通とは言い難い、極端な状況になる時もあるけどね。8人か9人くらいの仲間とプライベートジェットに乗ったり。でも、そんなの大した事柄じゃない。言いたいヤツには言わせておけばいいのさ。
僕らは自分たちの人生を生きているだけだ」
(『あの頃僕らは』 について、マグワイアはコメントを辞退した。映画制作者側から起こされた1000万ドルの訴訟によれば、マグワイアとディカプリオが出演し、多くのアドリブを入れた、質がいいとは言えないこの1996年の低予算映画は、彼らによって公開を阻止された。)

「トビーが、どんな時も誠実な、この仲間達に巡り会えたことは素晴らしいと思うわ」と、ウィザスプーンは言う。
「この業界では、人は人を裏切ることができるのだと知って、そのことで孤立してしまうこともあるのよ。でも、彼らは余計に絆がしっかりとしたみたいね」

もうすぐ真夜中になるというのに、まだファーガソンと連絡が取れないので、彼は静かな夜をガールフレンドと過ごすことにした。彼女はセレブなどではない普通の女性で、二人が付き合って7ヶ月になる。
ご期待に添えず申し訳ないのだが、今夜はレポートできるような自由奔放な若手ハリウッドスターのバカ騒ぎはみられないようだ。
なにしろ、マグワイアは酒を飲むことすらしないのだ。
「今まで一度も、酒やドラッグをやったことがないって訳じゃない」と、彼は言う。
「でも、そういうものは、自分がやりたいことの妨げになるだけだしね」

「多くの人は、‘成功する’ってことを、思い通りに操縦できないんだ」と、彼は続ける。
「みんなは成功することに価値なんてないって思ってるようだけど、それは、自分自身に価値がないって言ってるようなものさ。だから、失敗するんだ」
彼は一息ついた。葉巻の煙がL.Aの夜にたなびく。
「僕は自尊心に関わる問題を抱えてる。まあ、誰もがそうだと思うけど。でも、大事なことは、成功を手にするチャンスが僕に与えられてきたってことだ。成功することは僕の大きな夢だったし、失敗する気なんて全然ないんだよ」


By Josh Pottenberg