* Time for Tobey *

Roughcut.com 18/10/1998


23歳。
ハリウッドの腕白坊主・トビー・マグワイアは、自身の重大な時期にさしかかろうとしている。
今まで彼は、レオの親友としてよく知られてきただろうー―つまり、マスコミ向けの写真撮影は、すっかりレオの独壇場となっていたのだが、しかし、それは次第に変化してきているかもしれない。
『カラー・オブ・ハート』 で、彼は文字通りに、そして比喩的にも、テレビを見ているティーンのあこがれの的となった。その品の良い、白黒の映像は、彼の友人のポスターに占領されていた女の子達の部屋に変化を与えるかもしれないのだ。
レオは、この彼に巡ってきたチャンスを高く評価するだろう。



この映画での君の役柄は、カウチポテト族だったね。
君自身は学校から帰ったら、何を見ていたの?


その時の年齢によって違うけど、 『Three’s Company』 とか 『Charles in Charge』 みたいな番組が好きだったな。スゴク夢中になって見てたよ。僕は背が高くないから、そうだなあ・・・こういうTV番組向きかな。

どうやって‘50年代のホームコメディ’の中で暮らす準備をしたんだい?

(撮影現場というのは)本当に異世界だよね。
脚本を読んで、いろんな想像を巡らせてから行くと、かなり変なんだ。あそこへ行ったら、錯覚を起こしちゃうよ。だって、21世紀のビル街が立ち並んでいるかと思えば、みんなコスチュームを身に付けているんだから。
  実は、僕もこんなことがあって・・つまり、街の人に会ったんだけど、違っていて、ええと・・・つまり衣装や髪型や振る舞いなんかが撮影の時とは違っていたもんだから、2〜3人の女の子に会ったんだけど僕には全く見覚えがなくてね。彼女たちが「あら、トビー!元気?」って言うから、僕は「ええと・・・君、誰?」って。そしたら「忘れたの?私、あなたと一緒にソーダ・ショップで働いていたでしょ?」「嘘だろ!君、あの時の女の子?」
つまりさ、撮影現場のセットの中に入ればすぐに、(50年代の世界だと)錯覚させられるんだ。

フルカラーのセットで撮影をしたの?それとも、セットを白黒に塗って?

僕らは色つきのままだったし、撮影もカラーでだったと思うから、きっと後から・・・

どんどん色を抜いていって・・・

そうそう。ちゃんと色が付いたところから足したり引いたり。僕の知らない何かの加工をしてね。

君は現在、二つの時代の十代を演じているよね。『アイス・ストーム』では70年代を、今回は50年代を。どちらも君は経験してないわけだけど、演じていてどちらが難しかった?

そうだね。『カラー・オブ・ハート』のほうが少し難しかった。
というのは、本当は彼はその時代の十代じゃなかったわけだよね。彼は、実際には現代の若者で、50年代の世界に入り込んでしまっただけなんだ。服装やヘアスタイルは、あの番組の中の時代のものだったかもしれないけど、彼は全くの部外者だったんだ。
70年代の青年よりも、そんな現代の青年を演じる方がずっと難しいと思うよ。そうじゃないかな?

50年代については沢山調べた?

うーん・・・そう多くはやらなかったな。まあ、確かに番組を見ておきたいかとは聞かれたけど。
でも、そういうのにはあまりのめり込まないようにしたんだ。そこにはさっき言ったような、番組特有の別世界が広がっているわけだからね。
今まで幾つかのテレビ番組を見てきて、その時代についての話もしてきたけど、そんなの本当は現実のことじゃない。それは脚本にすぎないんだ。そして、実際にはさして重要でもない事柄なのに、誇張がされているかもしれない。
だから、ゲイリー(ロス)と話し合いをして、それから脚本に目を通すことにしたんだ。

昔のTV番組と言えば、君はドン・ノッツと一緒に仕事をしたね。

ドンは大好きだよ。とても面白い人だ。それに、もちろん、僕がドン・ノッツと仕事をしたことは、みんながワクワクしたと思う。それは僕もなんだけどね。でもこれって、僕にとっては 『Three’s Company』 のミスター・ファーレイと仕事をした、ってことなんだ。
ええと、誰かに映画についてとか、自分が誰々と・・・つまりビル・メイシーやリース・ウイザスプーンやドン・ノッツと仕事をするなんて話をするだろう?そうしたらみんなが言うわけさ。「ドン・ノッツだって!?嘘だろう!?彼がいる時に撮影現場に行ってもいいかな?」 聞いていておかしかったよ。つまり、彼はとても楽しい人だったんだ。
ゲイリーが彼をキャスティングした時、「ワオ!それは面白い考えだね」なんて事を言ったのを覚えてる。それから、ええと、最初の日だったな。自分のシーンがうまくできなくってね。なぜかって言うと、大笑いして、転げ回っていたからさ。

『楽園をください』 について、少し話して貰えるかな?

もちろん。それは南北戦争を題材にした映画で、ゲリラの戦いについて描いている。ジュエルが出演しているんだ。スキート・ウールリッチとジェフリー・ライトも。

兵士を演じるんだってね。

カンザスにはジェイホーカー、ミズーリにはブッシュワッカーという部隊があってね。
この両者の戦いが、「ゲリラ戦」だったんだ。ようするに、やってきたゲリラ達に、家族を殺され、家を焼き払われ、そして行くあてさえ奪われてしまう。それで、他方のゲリラ達と行動を共にするようになり、そして復讐を誓うんだ。本当に悲しい事だと思うよ・・・そんな事に巻き込まれた人たちがどこまで耐えられるって言うんだろう。
つまり、この映画には多くの事が含まれているんだ。戦いであったり、ラブストーリーであったり、友情や様々な形の解放であったり。

現在、君は本物のスターとなる一歩手前という感じだよね。その覚悟はできてる?

そのことに関して考えもしたけど、分からない。そうだな、覚悟を決めて、ベストを尽くして行くつもりだよ。それに僕にとっては、実に興味深いことでもあるんだ。名声の本来の意味だとか、その名声ってやつは、これからスターになるだろう人間を試すためのものじゃないかと考えたりすることがね。
だって、思いもよらないことで人は有名になったりするものだから。有名になった人の何割かは、自分でも思いがけずそうなったんじゃないかな。その中にはとても魅力的に思える人もいるから、僕も今のまま続けていきたいし、そしてできる限りベストを尽くすつもりなんだ。

(思いがけず名声を手にすることは)君をためらわせたりするかな?特に、友人のレオの経験したことを見た後で。君だって、ブームを起こしたタイタニックのような映画を作るに違いないよね。

そうだなあ・・でも、なんでまたそんな期待をするわけ?

できないかな。

分からない。うん、そのことについては考えるよ。分からない。
ひとつひとつの答えが、(今の質問に対する)それぞれの答えだよ。
それから、‘その時’が来たら僕には分かると思う。
そして・・そうだね、少し、そのことを決断するのに慎重になってる。でも、それは対処可能なものだと思うし、だから人は変わらずに居続けられるんだと思う。でも、時々、そういう人間は不当な扱いを受けるんだ。世間の人たちやカメラマン、プレスの人たちは、時として不適当になりうるんだよ。

今は、君の母親役であるジョン・アレンと共演して、2度目のオフになるね。今回の彼女は良い母親だった?

そうだなあ・・・ストーリーに関して言えばそうだと思うよ。でもね、彼女は前回も今回も、‘トビー’という人間にとって、とてもとても素晴らしい人だった。
彼女は、・・・ああ、うまく言えないな。彼女は、本当に驚異的な人だね。とても素晴らしい女優だよ。自惚れ屋でもない。彼女はまさに役者をするために現れた人だ。
彼女の倫理的価値観が続く限り、彼女は役者の中の役者なんだ。それに当然のことだけど、彼女の魅力はどんどん増していってるよね。

彼女と共演することで、演技について学んだ?

もちろんさ。彼女はとてもプロフェッショナルで、とても集中力があり、なにかこう・・・雑念のようなものに囚われたりしないんだよね。すごく集中力があるんだ。一日中仕事に打ち込むんだよ。人って、時々そうする必要がある。そうだろう?
時々、僕は言い訳してサボることがあるし、雑談やなんかをしたりもする。でも時々、妥協が許されない日もあって、その時には、自分自身と向き合う必要がある。そして頭の中でやるべき仕事をやり続ける。・・・僕にとっては難しいことなんだけれど。僕は、子供であることを諦めきれないタイプの人間だしね。それに、働く責任ってものもあるし。
だから、彼女の労働意欲には感服してしまうね。それに・・・彼女は同時に、とても自由でもあるんだ。彼女と仕事ができて、本当に嬉しいよ。

君の役柄は、‘(兄弟の)真ん中の良い子’って感じで、みんなと仲良くしようとするよね。そういう役柄に共感するところはある?

彼には共感できるよ。僕はまず映画全体について考えてみて、それからそのシーンを演じてみる。そして、できるだけ楽しくやろうと心がけているんだ。
この役は僕にとって難しいものだった。というのは、向こうの世界へ行ったら自分がどんな行動をとるかがすっかり分かってしまったから。僕はこれらの状況をコントロールしようとして、そして、そうだな・・・事態を鎮めようとするんだ。本当に大変だったのはジョンと僕のシーンで、元の彼女に戻そうとした時と、リースが演じた妹のやることを食い止めようとした時だね。
この役は、演じていて本当に難しいところもあったよ。あの世界へ行ってからの自分の行動が、すっかり分かっちゃっていたからね。でも、それって面白いことでもあるよね。普通の生活の中でそんなことをする時に、自分で意識なんかしないんだから。
でも、そのシーンを演じていると、自分がしようとしていることがはっきりと分かるんだ。だから、かなり落ち着かない感じだったな。

どうして彼は戻りたかったんだと思う?

いい質問だね。つまりさ、そこが彼の居場所なんだよ。それに、ある意味では、彼のあの場所での役目は終わったわけだし、あそこが自分の家でないことを彼は知っているしね。
彼があの世界に入り込んだ方法はかなりめちゃくちゃで、でも、なんというか・・・彼は家へ帰りたかったと思うし、自分が手に入れたものをしっかりと理解したように思う。
彼は本当に素晴らしい贈り物を手に入れて、自分の糧としたんじゃないかな。またとない経験ってものをね。でも、あそこは彼の居場所じゃなかった。彼は自分の家に帰らなきゃならなかったんだ。
僕はいつだって自分の家に帰りたいと思うよ。3〜4ヶ月の間撮影に出かけたあとは、L.A.ならどこだっていいから帰りたいって気持ちを抑えられなくなるんだけど、結局いつも最後に帰りたくなるのは自分の家なんだ。

以前に出演した映画よりも、今回の方が特殊効果を使った場面があることや、更に、多くの寓話が作品中に盛り込まれている事を考えると、その特殊効果や、または‘象徴と暗喩’のほうに話題を持って行かれるんじゃないかと心配にならなかった?

そんなこと、心配なんかしないよ。だって、映画そのものが主役だろ?分かるかい?僕にはそうなるのが分かっていた。
これはアンサンブルのような映画で、作品自身のテーマは、‘俳優(が主役)’と言うより、‘映画のための主役’だと僕は思う。とはいえ、しっかりとした演技があってこそだけどね。本当に全く心配なんかしてなかったよ。技術的なことにはワクワクさせられたし。演じている間考えていたんだけど、僕の最大の望みは、後からこの映画で使われた技術が手直しされ、誰かがそこから学び取って経験を積んでいくことさ。いづれにしても、それが僕の望みだよ。

自分で今回の作品を見て、何を思った?

僕はその質問を受けるには適した人間じゃないな。
最後に作品を見た時、もう少し馬に乗らなきゃならなかったんだけど、そうだなぁ、なかなか素晴らしい作品だったよ。
でも、僕は自分の仕事に対してとても批判的なんだ。自分自身を切り離して、観客のように作品を見るというのがとても難しいんだ。

自分自身をスクリーンで見るのは嫌い?

客観的に自分を見つめることは、多くの事を学べるし、そういった経験はありがたいと思うけど、難しいよね。本当に難しいんだ。分かるかな?
だけど大勢の観客と一緒に2〜3回この映画を見て、初めて自分自身を振り払うことができたんだ。とても映画を楽しんだよ。ほんの少し笑って、実は、泣いてしまった。ジョン・アレンとビル・メイシーに泣かされたんだ。今は、ビル・メイシーに何度も泣かされてるよ。撮影中に泣いてたみたいにね。ラッシュを見ながら泣いちゃったよ。

この映画の伝えたい事ってなんだろう?

この映画から得たものは沢山あるんだけど、僕にとってもっとも大切なことのひとつは、支配からの解放の方法を学んで、進歩のない行為と決別していくということ。こういった行為というのは、まったくもって自分自身の成長の妨げになるんだ。
それから、‘自己破壊’と‘支配しようとしない’ということ。つまり、とてもおかしな事なんだけど、僕は常にその事を考えていたんだ。人は絶対に他人の考えや行動を支配できないけど、必ずしも自分自身の考えや感覚を支配することができないとは言えないだろ?
可能なのは、人生において何をするのか、どんな行動をとるか、物事を諦める時、それから、もっと受動的にか、もっと能動的になのかを選択することだ。そしてそのことは興味深く、重要な事なんだよ。自分を最高の状態にキープするためだったり、自分自身にとても正直であるためにね。

ティーンはこの映画に良い反応を示すと思うかい?

思うよ。間違いなくティーンは良い反応を示すと思う。つまりね、ビル・メイシーやジョン・アレン、ジェフ・ダニエルズ、僕、リースが演じる登場人物の成長はとても説得力があって、みんな別人のようなんだ。


By Andy Jones